映画史に燦然と輝く不朽の名作、『テルマ&ルイーズ』。
この映画を語る上で欠かせないのが、あまりにも有名で、そして衝撃的なラストシーンですよね。
あの壮大な崖を前にした二人の「ラスト 死亡」ともいえる結末は、多くの人の心に焼き付いています。
ですが、この『テルマ&ルイーズ』には、私たちが知る結末とは別に、幻の「もうひとつのエンディング」が存在したことをご存知でしたか?
この記事では、その気になる「もうひとつのエンディング」の詳細から、物語のインスピレーションは「実話」だったのか?という疑問、そして作品の深い「考察」まで、あらゆる角度から徹底解説していきます。
物語の「あらすじ」を「ネタバレ」ありで追いながら、若き日の「ブラピ」の鮮烈な登場シーン、二人の深い絆を「百合」的な視点で読み解く面白さにも触れていきます。
映画『テルマ&ルイーズ』がなぜこれほどまでに人々を惹きつけるのか、その秘密に迫ります。果たして、あの衝撃的な「ラスト 死亡」シーンは避けられなかったのか、そして「実話」に基づいた物語だったのか、一緒に探っていきましょう。
『テルマ&ルイーズ』の結末と、幻の「もうひとつのエンディング」の存在
まずは物語の基本から:『テルマ&ルイーズ』のネタバレあらすじ
この映画の魅力を深く知るために、まずは二人の旅路を振り返ってみましょう。
(※ここからは物語の結末に触れる内容が含まれますので、ご注意くださいね!)
物語の主人公は、高圧的な夫のもとで自分を押し殺して生きる主婦のテルマと、ウェイトレスをしながら自立しているものの、心に傷を抱える親友のルイーズ。
二人は退屈な日常から抜け出すため、週末だけの気軽な釣り旅行へと出かけます。
しかし、旅の途中で立ち寄ったバーで、悲劇が起こります。
テルマが男性にレイプされそうになり、助けに入ったルイーズが相手を射殺してしまうのです。
正当な裁きを信じられないルイーズは、警察へは行かず、メキシコへの逃亡を決意します。
ここから、二人の人生は、後戻りのできない逃避行へと変わっていくのでした。
警察に追われる中、二人は様々な出会いと別れを経験します。
特に、テルマが道中で出会う若きヒッチハイカー、J.D.との出会いは、彼女の人生を大きく動かすきっかけとなります。
しかし、彼に有り金をすべて盗まれてしまい、二人は絶体絶命のピンチに。
この窮地を救ったのは、他でもないテルマ自身でした。
それまでルイーズに頼りきりだった彼女が、J.D.から聞いた手口を元に強盗を成功させ、旅を続ける資金を手に入れるのです。
臆病な主婦から大胆なアウトローへ。
この変貌こそ、この物語の核心の一つです。
数々の罪を重ねながらも、二人は生まれて初めて本当の自由を謳歌し、その絆を深めていきます。
伝説のラストシーン:崖からの飛翔と二人の「死亡」が意味するもの
『テルマ&ルイーズ』と聞いて、誰もが思い浮かべるのが、あの崖からのラストシーンではないでしょうか。
警察の大群に追い詰められ、進むも地獄、退くも地獄という絶望的な状況。
あの壮大な崖は、実はアリゾナ州のグランドキャニオンではなく、ユタ州の「デッド・ホース・ポイント州立公園から見える地点(フォッシル・ポイント付近)で撮影されました。(出典:ユタ州観光局の紹介記事/ロケ地ガイド)
その名の通り、どこか不吉でありながら、神々しいほどの美しさを湛えた場所です。
物理的に考えれば、あの高さから車で飛び降りれば、二人の「死亡」は免れません。
彼女たちの旅は、悲劇的な死で終わった。そう解釈するのが自然です。
しかし、リドリー・スコット監督の演出は、それを単なる「死」として描きませんでした。
二人は手を取り、キスを交わし、覚悟の微笑みを浮かべてアクセルを踏み込みます。(このキスはスーザン・サランドンの提案による即興として語られています)
そして、彼女たちの乗るサンダーバードが空高く舞い上がったその瞬間、映像はストップモーションとなり、白い光に包まれてエンディングを迎えます。
この演出によって、彼女たちの最期は「捕らえられた敗北」や「絶望的な自殺」ではなく、「自らの意志で選び取った、永遠の自由への飛翔」として、神話的な輝きを放つことになったのです。
捕まってシステムの裁きを受けるよりも、二人でいることを選び、自らの物語を完結させる。
これ以上ないほど美しく、そして力強いラストシーンだと言えるでしょう。
運命を狂わせた青年J.D.:無名時代の「ブラピ」の衝撃的登場
この物語のターニングポイントを作る重要な人物が、ブラッド・ピット演じるJ.D.です。
今でこそハリウッドの大スターである「ブラピ」ですが、当時はまだほとんど無名の俳優でした。
しかし、彼がこの映画で放った輝きは、まさに衝撃的でした。
テルマを魅了する、セクシーで危険な香りのする青年J.D.。
彼はテルマに女性としての自信と喜びを与えると同時に、彼女たちの大切な有り金を盗んでいくという、天使と悪魔のような二面性を持ったキャラクターです。
彼の裏切りがなければ、二人はメキシコで新しい人生を始められたかもしれません。
しかし、彼がテルマに強盗の手口を教えていなければ、テルマが自立した強い女性へと変貌することもなかったでしょう。
わずか十数分の出演時間にもかかわらず、彼の存在は物語を根底から揺さぶり、テルマの成長を促す重要な役割を果たしました。
この役で一躍スターダムにのし上がった「ブラピ」。
彼のキャリアを語る上で、『テルマ&ルイーズ』は外すことのできない、伝説の始まりとなった作品なのです。(ブレイク作として広く言及)
なぜ傑作なのか?「テルマアンドルイーズ もうひとつのエンディング」から深掘りする多角的考察
劇場版とは異なる結末:「もうひとつのエンディング」の具体的な内容
さて、ここからが本題です。
実は、『テルマ&ルイーズ』には、私たちが知るあの有名なラストシーンとは別に、劇場公開前の編集段階で用意され、のちにDVD/BDの特典として収録された「拡張版(削除シーン扱い)」があります。(“完全に別の結末”というより、劇場版ラストの直後を補足する映像です)
その内容は、劇場版とはかなり印象が異なります。
劇場版では、車が空中に飛び出した瞬間に映像が止まりましたが、「もうひとつのエンディング」では、物語はさらに続きます。
車はそのまま落下し、谷底へと消えていくのです。
そして、カメラは崖の上で呆然と立ち尽くすハーヴェイ・カイテル演じるスローカム刑事の、悲しみに満ちた表情を映し出します。
さらに、B.B.キングの楽曲「Better Not Look Down」に乗せて、二人が旅の道中で見せた幸せそうな笑顔の数々がモンタージュで流れ、最後に二人の車がハイウェイを走り去っていくかのような象徴的ショットで締めくくられます。
なぜ、このバージョンは採用されなかったのでしょうか。
それは、リドリー・スコット監督が、より「神話的」で観客の想像力に訴えかける結末を選んだからです。
落下という現実を見せてしまうと、どうしても「悲劇的な死」という印象が強まってしまいます。
それよりも、空中で永遠に輝き続ける二人を描くことで、彼女たちの選択をよりポジティブで力強い伝説として完結させたかったのでしょう。
この監督の判断が、本作を不朽の名作にした最大の要因かもしれませんね。
この物語は実話?脚本に込められた社会的なメッセージを考察
物語があまりにリアルなため、「この話は実話なの?」と感じる方も多いようです。
結論から言うと、『テルマ&ルイーズ』は特定の事件を元にした「実話」ではありません。
しかし、この物語は、脚本家カーリー・クーリが当時の社会で女性が置かれていた状況や、理不尽な経験に対する怒りを色濃く反映した、非常に現実的なフィクションです。
物語の発端となる、テルマがレイプされそうになるシーン。
そして、「警察に行っても、私たちの言い分なんて誰も信じない」とルイーズが言うセリフは、当時の(そして現代にも通じる)司法システムにおける、女性の声の軽さを痛烈に批判しています。
彼女たちが逃げなければならなかったのは、単に殺人という罪を犯したからだけではありません。
自分たちを守ってくれるはずの社会そのものから、見えない形で追いつめられていたからです。
そういう意味では、この物語は特定の「実話」ではなく、多くの女性たちが経験してきた、数えきれないほどの「リアルな物語」の集合体と言えるのかもしれません。
友情か、それ以上の絆か?二人の関係性を「百合」的視点で読み解く
『テルマ&ルイーズ』のもう一つの魅力は、主人公二人の間に流れる、言葉では言い表せないほど深い絆です。
これは単なる友情なのでしょうか? それとも、もっと特別な愛情なのでしょうか?
この二人の関係性を、いわゆる「百合」的な視点で読み解くファンや批評家は少なくありません。
物語を通じて、彼女たちの周りにいた男性たちは、支配するか、裏切るか、あるいは無力であるかのいずれかでした。
結局、最後までお互いを理解し、守り、救い合えたのは、テルマとルイーズだけでした。
二人にとって、お互いこそが唯一の世界であり、安らげる場所だったのです。
そして、クライマックスで交わされる最後のキス。
あれは、友情の証なのでしょうか。それとも、永遠の愛の誓いだったのでしょうか。
捕らえられて引き離されるくらいなら、共に死を選ぶという究極の選択は、最高のラブストーリーのようにも見えます。
監督や脚本家が意図したかどうかは別として、この映画が描いた女性同士の強烈な連帯感(シスターフッド)は、観る人によって様々な解釈を許す、豊かで深いものなのです。
まとめ:『テルマアンドルイーズ もうひとつのエンディング』が私たちに問いかけるもの
ここまで、『テルマ&ルイーズ』の魅力を様々な角度から見てきました。
劇場で公開されたあの輝かしいラストシーンと、特典映像として残された、より現実的な「もうひとつのエンディング」。
二つの結末を知ることで、私たちはこの映画が持つメッセージを、より深く考えることができます。
もし、あなたがテルマやルイーズと同じ状況に置かれたら、どうしたでしょうか。
この映画は、単なるエンターテイメントではなく、自由とは何か、正義とは何か、そして人が本当に自分らしく生きるとはどういうことなのかを、私たち一人ひとりに問いかけてくるようです。
だからこそ、公開から30年以上経った今でも、この二人の女性の物語は色褪せることなく、私たちの心を揺さぶり続けるのでしょう。
この記事のまとめ
- テルマアンドルイーズは1991年公開のロードムービー
- 平凡な主婦とウェイトレスの逃避行を描く物語
- ラストシーンの崖はユタ州のデッドホースポイント州立公園“から見える地点(フォッシル・ポイント付近)”
- 劇場版の結末は車が空中で静止する象徴的なもの
- DVD/BD等の特典には、落下やスローカム刑事の反応、B.B.キングの曲「Better Not Look Down」などを用いた“拡張版(削除シーン扱い)”が収録されている
- ブラッドピットがJ.D.役で出演し世界的なスターになるきっかけとなった
- 物語は特定の実話ではないが社会的なリアリティを反映している
- 脚本は女性脚本家のカーリークーリが担当した
- レイプ未遂事件をきっかけに二人は逃亡者となる
- テルマは旅を通じて臆病な主婦から強い女性へと変貌する
- 二人の深い絆は友情以上のものとして解釈されることもある
- 監督はエイリアンやブレードランナーで知られるリドリースコット
- 西部劇のオマージュともいえる要素が多く見られる
- フェミニズム映画の金字塔として高く評価されている
- 映画の結末は観る者に多くの問いを投げかける
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