映画『マレフィセント』を観て、「彼女は本当に“いい人”だったのでは?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
この物語は、私たちが知る『眠れる森の美女』の原作と違う、彼女のもう一つの顔を描いています。
なぜマレフィセントは、あれほどひどい呪いをかけるに至ったのか。
その裏には、愛する人に翼を奪われた、あまりにもかわいそうな過去がありました。
そもそも祝宴になぜ呼ばれなかったのかという根本的な問いから、非道な行いで“ステファン(クズ)”とまで呼ばれる王の姿、どこか頼りない「妖精3人」の役割、そして彼女が「鉄に弱い」という秘密まで、あらゆる角度から彼女の真実に迫ります。
この記事では、世間の評価も交えながら、悲劇のヒロイン・マレフィセントのすべてを徹底的に解説します。
なぜ「悪の妖精」は嘘?マレフィセントが本当は“いい人”と評価される理由

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実写映画が描いたのは、私たちが知る「悪の妖精」が誕生するまでの、悲しくも切ない物語でした。
彼女が冷酷な復讐者へと変貌した背景には、私たちの想像を絶する苦しみと裏切りがあったのです。
ここでは、彼女が“いい人”だった過去と、その心を変えてしまった出来事について見ていきましょう。
悲劇の発端:なぜマレフィセントはオーロラ姫の洗礼式に「呼ばれなかった」のか

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物語の象徴的なシーンである、オーロラ姫の洗礼式。マレフィセントがここに乗り込み、呪いをかけることが全ての始まりですが、そもそも「なぜ彼女は招待されなかったのか」という理由は、アニメ版と実写版で全く意味合いが異なります。
アニメ版では、彼女が悪の存在だから、というシンプルな理由でした。祝の席に災いをもたらす存在を呼ぶわけにはいかない、というのは当然ですよね。
しかし実写版では、もっと個人的で、根深い理由が隠されています。オーロラ姫の父であるステファン王は、かつてマレフィセントと深く愛し合った仲でした。
しかし彼は王位という野心のために、彼女を裏切ります。
つまり、ステファンにとってマレフィセントは、自らの罪の象徴であり、最も会いたくない存在。
招待するなんて、とても考えられなかったのです。
マレフィセントが式典に現れたのは、単に招待されなかったことに腹を立てたからではなく、自分を裏切った男への復讐を宣言するためでした。この背景を知ると、彼女の行動が単なる悪意からではないことが分かりますね。
あまりにも「ひどい」裏切り…翼を奪われた彼女の「かわいそう」な過去

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マレフィセントの物語を語る上で、決して避けては通れないのが、ステファンによる裏切りです。
彼は野心のために、愛し合ったはずのマレフィセントに眠り薬を飲ませ、彼女のアイデンティティであり、自由の象徴でもあった大きな翼を無慈悲に切り落としてしまいます。
目を覚まし、背中の翼を失ったことに気づいた彼女の絶叫は、観る者の心に深く突き刺さります。
この出来事は、単に身体を傷つけられた以上の、魂の殺人とも言える行為でした。信じていた愛が偽りであり、その手によって自らの尊厳が奪われたのですから、彼女の心が憎しみと絶望で満たされてしまうのも無理はありません。
私たちが「ひどい」と感じる彼女の復讐は、このあまりにも「かわいそう」な経験から生まれた、悲しい心の叫びだったのです。この視点を持つと、彼女は加害者であると同時に、最も深い傷を負った被害者であることが理解できるでしょう。
真の悪役は「ステファン」?彼の非道な行いがマレフィセントを変えた

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マレフィセントが豹変するきっかけを作ったステファンですが、彼の非道な行いは裏切りだけにとどまりません。
王位に就いた彼は、マレフィセントからの復讐を恐れるあまり、完全な暴君と化していきます。国を豊かにすることよりも、鉄の兵器を作り、マレフィセントを討ち滅ぼすことだけに執着するのです。
その狂気は、自分の家族にさえ向けられます。妻が病で亡くなる時も見舞うことなく、16年ぶりに再会した実の娘オーロラに愛情を示すどころか、「呪いの道具」として部屋に閉じ込めてしまいます。
彼の目には、もはや娘の姿はなく、マレフィセントへの憎しみしか映っていませんでした。自分の罪から目をそらし、恐怖に支配され、最も愛すべき家族さえも顧みないその姿は、マレフィセント以上に「真の悪役」と呼ぶにふさわしいかもしれません。
妖精の唯一の弱点?マレフィセントが「鉄に弱い」理由と伝承の背景

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あれほど強大な魔力を持つマレフィセントにも、一つだけ弱点があります。それは「鉄」です。鉄に触れると、彼女はやけどのような傷を負ってしまいます。
この設定は、実はヨーロッパの古い伝承に基づいています。古来より妖精たちは、人間が作り出した「冷たい鉄」を嫌うと信じられてきました。
これは、鉄が象徴する「文明」や「人工物」が、妖精たちの住む「自然」や「魔法」の力を乱してしまう、という考え方が背景にあるようです。
映画では、この弱点が巧みに使われています。ステファン王が執着する鉄の兵器は、まさに人間による自然支配の象徴。
この弱点があるからこそ、マレフィセントは決して無敵ではなく、物語に緊張感が生まれるのです。この設定は、物語にファンタジーとしての深みを与えると同時に、彼女の存在がいかに自然と共にあるかを示しています。
原作との比較で解き明かす、マレフィセントが“いい人”である根拠

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マレフィセントの「いい人」説は、彼女自身の物語だけでなく、おなじみの『眠れる森の美女』の世界観を大きく変えた、様々な比較点からも浮かび上がってきます。
原作とどこが違うのか、そしてその違いが何を生み出したのかを見ていくことで、彼女の魅力がさらに明確になるはずです。
『眠れる森の美女』とは根本から「原作と違う」視点と物語
実写版『マレフィセント』の最大の特徴は、なんといっても物語の視点をヴィランであるマレフィセントに置いたことです。
これにより、私たちは「なぜ彼女がオーロラ姫を呪ったのか」という、これまで語られなかった物語の裏側を知ることになりました。原作アニメでは絶対的な悪だった彼女が、愛と裏切りを知る悲劇のヒロインへと生まれ変わったのです。
この視点の転換は、物語の結末さえも変えました。原作では王子様のキスが姫を救いますが、実写版では、オーロラを憎みながらも育てていくうちに芽生えた、マレフィセントの母性愛こそが「真実の愛」として描かれます。この新しい解釈は、現代の多様な愛の形を認め、多くの観客の共感を呼びました。
オーロラ姫を守った「3人の妖精」の役割はどう変わったのか?

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原作アニメでオーロラ姫を献身的に育てた、フローラ、フォーナ、メリーウェザーの3人の善良な妖精たち。彼女たちの存在を覚えている方も多いでしょう。
ところが、実写版の妖精たちは、驚くほど頼りなく、コミカルで、少々無能な存在として描かれています。赤ん坊のオーロラにまともな食事も与えられず、常にケンカばかり。
実は、このキャラクター変更が非常に重要な意味を持っています。妖精たちが頼りないおかげで、影から見守っていたマレフィセントが、仕方なくオーロラの世話を焼くことになるのです。
憎い相手の娘を守り育てるという皮肉な状況が、彼女の凍てついた心を溶かし、母性を目覚めさせるきっかけとなりました。3人の妖精の役割変更は、マレフィセントとオーロラの絆という、この物語の核を描くための巧みな仕掛けだったのです。
映画の「評価」を決定づけたアンジェリーナ・ジョリーの圧倒的な魅力

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この映画の成功を語る上で、主演のアンジェリーナ・ジョリーの存在は欠かせません。
彼女の演技と圧倒的なカリスマがなければ、マレフィセントというキャラクターがここまで世界中の人々を魅了することはなかったでしょう。
高くそびえる頬骨、射るような鋭い視線、そして時折見せる寂しげな表情。そのすべてが、マレフィセントの複雑な内面を完璧に表現していました。
世間の評価を見ても、物語の脚本や他のキャラクターに対する批判的な意見はあれど、アンジェリーナ・ジョリーの演技に対しては、ほぼ満場一致で絶賛の声が上がっています。
彼女こそが、この新しいマレフィセント像に命を吹き込み、多くの人が「マレフィセントは本当はいい人だったのかもしれない」と感じる最大の説得力となったのです。
【まとめ】マレフィセントは本当に「いい人」なのか?物語が伝える“真実の愛”の形

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さて、ここまで様々な角度からマレフィセントの物語を振り返ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
結論として、マレフィセントは単純な「いい人」や「悪人」という言葉では到底括ることのできない、非常に複雑で、痛みを知る、魅力的なキャラクターだと言えるでしょう。
彼女は確かに、許されない罪を犯しました。
しかし、その根底には、愛する人に裏切られ、尊厳を踏みにじられた深い悲しみがありました。
そして、憎むべき相手の娘であるオーロラの中に、再び愛を見出し、自らの過ちを乗り越えて再生していきます。
この物語が私たちに伝えてくれるのは、善と悪は紙一重であるということ、そして愛には様々な形があり、時には憎しみさえも溶かしてしまうほどの力がある、ということなのかもしれません。
もしあなたがまだ映画を観ていないなら、ぜひこの悲しくも美しい「真実の愛」の物語に触れてみてくださいね。
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実写映画はマレフィセントを悲劇のヒロインとして描いた
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多くの視聴者は彼女を「いい人」で「かわいそう」だと感じている
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彼女は元々ムーア国を守る心優しい妖精だった
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人間の少年ステファンと深く愛し合っていた過去がある
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王位を狙うステファンのひどい裏切りで翼を奪われた
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この絶望が彼女を冷酷な復讐者へと変貌させた
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洗礼式に呼ばれなかったのはステファンとの確執が原因
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オーロラ姫への呪いは自らが受けた苦しみを反映している
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物語の真の悪役は非道なステファン王という見方ができる
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鉄に弱いという弱点はヨーロッパの古い妖精伝承に由来する
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原作アニメとは主人公の視点や物語の結末が大きく違う
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3人の妖精はマレフィセントとオーロラの絆を深めるため頼りなく描かれた
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育ての親であるマレフィセントの愛が「真実の愛」として示された
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アンジェリーナ・ジョリーの演技が作品の評価を決定づけた
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物語は愛によって再生する複雑な主人公の姿を描いている