ハル・ベリーの『キャットウーマン』はなぜ酷評されるのか?駄作の烙印と隠れた魅力を徹底解剖

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映画史には、傑作として語り継がれる作品がある一方で、その逆、つまり「なぜ作られたのか」とまで言われる作品も存在します。2004年に公開された、ハル・ベリー主演の映画『キャットウーマン』は、残念ながら後者の代表格として多くの映画ファンの記憶に刻まれています。

アカデミー賞女優を主演に迎えながら、なぜ本作は酷評の嵐に見舞われたのでしょうか。本記事では、この伝説的な作品が「ひどい」と言われる理由を多角的に分析し、その評価の妥当性を検証します。

同時に、批判の影に隠された意外な魅力や、今だからこそ語れる価値についても深く掘り下げていきます。

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映画『キャットウーマン』とは?ハル・ベリー主演作の基本情報

ハル・ベリーの『キャットウーマン』はなぜ酷評されるのか?

ハル・ベリーの『キャットウーマン』はなぜ酷評されるのか?

まずは本作がどのような作品なのか、基本的な情報を押さえておきましょう。この前提を知ることが、後の評価を理解する助けとなります。

あらすじと独自の世界観

物語の主人公は、内気で控えめなグラフィックデザイナー、ペイシェンス・フィリップス(ハル・ベリー)。彼女は巨大化粧品会社「ヘデア・ビューティー社」で働いていましたが、ある日、会社の恐ろしい秘密を知ってしまったことで命を狙われ、殺されてしまいます。

しかし、古代エジプトの猫神「マオ・キャット」の神秘的な力によって蘇生。猫のような驚異的な身体能力と、野性的で奔放な別人格を手に入れた彼女は、自らを「キャットウーマン」と名乗り、自分を殺した者たちへの復讐を誓う…というストーリーです。

監督ピトフと主要キャスト

監督は、フランス出身で視覚効果アーティストとしてキャリアを積んだピトフ。彼の独特な映像センスは、本作の評価を二分する要因の一つとなりました。主演は、本作公開のわずか2年前に『チョコレート』でアフリカ系アメリカ人として初のオスカー主演女優賞に輝いたハル・ベリー。

敵役のローレル・ヘデアを『氷の微笑』のシャロン・ストーンが、ペイシェンスに惹かれる刑事を『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』のベンジャミン・ブラットが演じるなど、キャストは豪華な布陣でした。

なぜ「ひどい」と言われる?『キャットウーマン』が酷評される決定的理由3選

豪華キャストにもかかわらず、なぜ本作の評判は地に落ちてしまったのでしょうか。その理由は複合的ですが、主に以下の3点に集約されます。

① 原作を無視したキャラクターと希薄なストーリー

最大の批判点は、DCコミックスの原作から大きく逸脱した設定です。原作のキャットウーマンの正体は、ゴッサム・シティの義賊「セリーナ・カイル」。彼女はバットマンと複雑で魅力的な関係を築く、ダークで深みのあるキャラクターです。

しかし、本作の主人公は「ペイシェンス・フィリップス」という全くの別人。超自然的な力で蘇るという設定も、原作の現実的なトーンとは相容れません。この根本的な改変が、多くのアメコミファンの反感を買いました。

ストーリーも、化粧品の副作用を巡る企業陰謀というスケールの小さなもので、ヒーロー映画としてのカタルシスに欠けていたと言わざるを得ません。

② 目的のわからない奇妙な演出とCGI

ピトフ監督による映像は、MTVライクな目まぐるしいカット割り、奇妙なアングルの多用、そして当時の水準で見ても粗さが目立つCGIで構成されています。特に、キャットウーマンが壁を跳ね回るシーンの不自然な動きは、没入感を大きく削いでしまいました。

また、ハル・ベリーが猫のように振る舞うシーン(寿司バーで大量の寿司を食べたり、キャットニップに興奮したり)は、セクシーさを狙ったのかもしれませんが、多くの観客には滑稽に映ってしまいました。

③ バットマン不在の世界で孤立したヒーロー像

キャットウーマンというキャラクターの魅力は、バットマンという光に対する影、あるいは合わせ鏡のような存在である点にあります。しかし本作にはバットマンが登場せず、ゴッサム・シティという舞台もありません。

これにより、彼女の存在意義が希薄になり、単なる「猫の能力を持つ女性」という浅いキャラクターになってしまいました。他のDC映画との関連性がないため、ユニバースとしての広がりも感じられず、孤立した作品という印象を強めています。

関連作品としては、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』シリーズにおけるアン・ハサウェイ版キャットウーマンと比較されることも多く、そのキャラクター造形の差は歴然です。

辛辣な評価の嵐 – Rotten Tomatoesと伝説のラジー賞

批評家や観客からの評価は、数字となって明確に表れています。

Rotten Tomatoesでの衝撃的なスコアと批評家の声

批評家レビューを集積するサイト「Rotten Tomatoes」では、本作の支持率は一桁台(最新では8%前後、レビュー数の増減で変動)です。記事執筆時点の具体値は必ず最新ページをご確認ください。

批評家の総意は「ハル・ベリーの才能を無駄遣いし、キャラクターのダイナミクスを理解していない、馬鹿げたアクション映画」という非常に手厳しいものでした。同様に、一般観客の評価を示すIMDbでも、スコアは3点台(変動あり)と低迷しています。 

ハル・ベリーの伝説のスピーチ:最低主演女優賞を自ら受賞

本作はその年の最低映画を選ぶ「ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)」で、作品賞、監督賞、脚本賞、そして主演女優賞の4部門を受賞(全7ノミネート)。特筆すべきは、ハル・ベリー本人が授賞式に出席し、トロフィーを直接受け取ったことです。

彼女は『チョコレート』で受賞したオスカー像を片手に登壇し、「キャリアのどん底にいるためには、まず頂点に立つ必要がある」とユーモアと品格に満ちたスピーチを披露。この潔い態度は多くの称賛を集め、作品の評価とは裏腹に彼女自身の評価を大いに高めました。

それでも見捨てきれない!今だからこそ語れる『キャットウーマン』の魅力

酷評の数々を紹介してきましたが、果たしてこの映画には何の価値もないのでしょうか?いいえ、視点を変えれば、本作ならではの魅力も見えてきます。

ハル・ベリーの圧倒的なカリスマと身体能力

脚本や演出に難はあっても、ハル・ベリーのスター性と身体能力は本物です。露出度の高い衣装を着こなし、しなやかなアクションを披露する姿は、まさにスクリーン映えします。彼女の存在感があったからこそ、この破綻した物語が最後まで映画として成立したとも言えるでしょう。

彼女のプロフェッショナルな演技は、作品の数少ない救いとなっています。

クラウス・バデルトによる記憶に残るサウンドトラック

意外と見過ごされがちですが、本作の音楽は高く評価されています。『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズで知られるクラウス・バデルトが手掛けたサウンドトラックは、ミステリアスでエキゾチックな雰囲気を醸し出し、映画のムードを盛り上げています。

特にメインテーマは耳に残りやすく、映像の欠点を補って余りあるほどの完成度を誇ります。

2000年代の「空気感」をパッケージした映像美

前述の通りCGIには難がありますが、ローライズジーンズや派手な衣装、クールなR&Bが流れるクラブシーンなど、本作には2000年代初頭のポップカルチャーが色濃く反映されています。

今観ると、その独特の「ダサかっこよさ」が一種のノスタルジーを喚起し、時代を象徴する作品としてカルト的な楽しみ方ができるかもしれません。

SNSでのリアルな感想 – 「一周回って面白い」は本当か?

近年、SNSでは「#キャットウーマン」のハッシュタグと共に、本作を再評価する声も散見されます。曰く「ツッコミどころが多すぎて逆に面白い」「何も考えずに観られる最高のポップコーンムービー」「ハル・ベリーが美しいから全て許せる」など、いわゆる「Z級映画」や「カルト映画」として愛するファンも少なくありません。

駄作と切り捨てるのではなく、こうした楽しみ方ができるのも、本作が持つある種の魅力と言えるでしょう。

まとめ:映画史の“愛すべき失敗作”として観るべきか?

ハル・ベリー主演の『キャットウーマン』は、アメコミ映画化の失敗例として、間違いなく映画史にその名を刻んでいます。希薄な脚本、原作からの乖離、奇妙な演出は擁護しがたい点です。

しかし、同時にハル・ベリーというスターの輝き、優れた音楽、そして2000年代という時代の空気が詰まった、唯一無二の作品でもあります。

もしあなたが、練り上げられた物語や深いテーマ性を映画に求めるなら、本作は避けるべきかもしれません。しかし、「伝説の駄作とは一体どんなものか?」という好奇心があるなら、あるいはツッコミを入れながら仲間と楽しむ一本を探しているなら、これほど適した作品はないでしょう。

完璧な映画ではない、むしろ欠点だらけの映画。それでもなぜか忘れられない。それこそが『キャットウーマン』という“愛すべき失敗作”の正体なのかもしれません。あなたはこの作品を、どう評価しますか?

FAQ – 『キャットウーマン』に関するよくある質問

Q1: この映画はバットマンの世界と繋がっていますか?

A1: いいえ、繋がっていません。本作はゴッサム・シティを舞台にしておらず、バットマンやその他のDCキャラクターも登場しない、完全に独立した物語です。主人公も原作のセリーナ・カイルではなく、ペイシェンス・フィリップスというオリジナルキャラクターです。

Q2: 主演のハル・ベリーの日本語吹き替えは誰ですか?

A2: 劇場・DVD/BD版では本田貴子さんテレビ朝日版(日曜洋画劇場)では深見梨加さんが担当しています。以前の記述(本上まなみさん)は誤りでした。

Q3: 続編の予定はありますか?

A3: 興行的にも批評的にも大失敗に終わったため、続編の企画は存在しません。DCコミックスのキャラクターとしてのキャットウーマンは、その後『ダークナイト ライジング』や『THE BATMAN-ザ・バットマン-』で、新たな女優によって演じられています。


※ 本記事で扱う各種スコアや受賞情報は更新・変動する場合があります。必ず公式サイトや一次情報(Rotten TomatoesIMDb・ラジー賞の公式情報など)で最新の内容をご確認ください。